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2019年3月3日（日）　　わたしたちの主の変容

「彼の言うことを聞きなさい」　　　　　ルカの福音書9章28～36節

牧師　若林學　　　　　　

　
　わたしたちの父なる神と主イエス・キリストから恵みと平安とがあなた方の上にありますように。アーメン。

1月6日の顕現日(けんげんび)に、東の国の博士たちに、神様は幼子の姿でご自身を現わしてくださいました。そして本日弟子達に、それも3人の弟子たちだけに、変容された顔と、光り輝く衣をまとわれた、神様としての御自身の本当の姿を現されました。

神様としての御自身の姿を弟子たちに現されたのは、弟子たちの信仰を確実なものとするためでした。弟子たちに、自分たちは疑いなくまことの神様を信じているのだ、という確信を持たせるためです。

しかし現代の私達は弟子たちが体験したように、直接イエス様と出会うことも、御声を聞くことも、奇跡を見ることもできません。私たちがイエス様を神様と信じるのに手掛かりとなる手段は、聖書に書かれている御言葉と奇跡と弟子たちの証だけです。多くの人達は、4つの福音書に書かれているそのイエス様の御言葉と奇跡と弟子たちの証を知って、この御方を信じてみようとします。ところが、悔い改めと言う自分の人間性を否定するような要求の前に、挫折してしまうのです。

この時大切なことは、神様を求め続けることです。イエス様はルカの福音書11章9節で言われます。「わたしは、あなたがたに言います。求めなさい。そうすれば与えられます。捜しなさい。そうすれば見つかります。たたきなさい。そうすれば開かれます。」神様を求め続ければ、必ず神様が与えられるとイエス様御自身が保証しておられます。これはすごい約束です。「神様、あなたに会いたいのです。」という願いを持ち続けることです。そうすれば、神様御自身が御自分に会う道を、あなたのために準備してくださるのです。神様に至る道は、人間には分らないからです。そして準備が整うと、神様の方から会ってくださるのです。その準備とは、私たちを悔い改めに導いてくださる準備です。即ち、私たちに罪の赦(ゆる)しを願うように導かれるのです。イエス様はルカの福音書 5章32節で言われました。「わたしは正しい人を招くためではなく、罪人を招いて、悔い改めさせるために来たのです。」ですからイエス様とお会いする道はただ一つ、悔い改めることです。私も神様を求め続け、10年後に漸く悔い改めに導かれました。求めれば必ず与えられると、イエス様が約束された通りです。

そんなわけで、本日イエス様はご自分の本当の姿を弟子たちに現すために、ペテロとヤコブとヨハネの3人の弟子たちだけを連れて、山に登って行かれました。何故ペテロとヤコブとヨハネの3人だけなのでしょうか。この3人は神様を強烈に求めていた人たちであったからです。それはイエス様がこの3人だけに、特別にあだ名をつけられたことからもわかります。ペテロとは、「岩」と言う意味で、イエス様がつけたあだ名です。本名はシモンです。きっと岩のようにイエス様を信じて動かなかったのかもしれません。でもぺテロは、イエス様が最後の晩餐の後、ユダヤ人に捕まり、女中の一人から「この人はナザレ人イエスと一緒でした。」と指摘されると、ぐらぐらとしてしまい、「そんな人は知らない。」と否認しています。（マタイ26：71, 72）そして自分のふがいなさに落ち込んでいるのです。あの有名なイエス様の一番弟子も、私たちと変わりない人間であることが分かります。

ヤコブとヨハネはボアネルゲ、即ち「雷の子たち」と付けられました。短気だったのかもしれません。短気と言うのは直情型で、自分の感情を素直に出してしまう人です。言ってみれば単純な人です。その代わり、真摯に神様を求めていた、とも言えます。こんなわけで、3人とも問題がありましたが、イエス様が最も信頼した弟子たちであったことは、あだ名をつけられたことから容易に伺えます。

山の上でイエス様の祈りが長く続くので、3人の弟子たちは眠くてたまらなかったようですが、何とか持ちこたえていたようです。ですから、この三人の弟子たちには、イエス様の御顔の様子が変わり、御衣が稲妻のように光り輝いたのが分かりました。そしてモーセとエリヤが栄光輝く姿で現れ、イエス様と話し合っている内容も聞いていました。そうでなければ、イエス様がこの三人をわざわざ高い山の上まで連れてきた意味がありません。最初から最後まで見届ける、証人になってもらうつもりだったからです。

何故モーセとエリヤが現れたのでしょうか。モーセは紀元前1500年前の人で、イスラエル民族をエジプトの奴隷生活から引き出し、創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記の、いわゆるモーセ五書を書き記し、イスラエル民族を、真の神様を信じる信仰集団に、まとめ上げた人です。しかしモーセは死ぬ前に、主なる神様から告げられました。申命記31章16節です。「あなたは間もなく先祖と共に眠る。するとこの民は直ちに、入って行く土地で、その中の外国の神々を求めて姦淫を行い、わたしを捨てて、わたしが民と結んだ契約を破るであろう。」自分の死期が近づいているモーセにとって、この様に告げられることは、とても悲しかったことでしょう。でもどうしょうもありませんでした。残念だったと思われます。

一方エリヤは、紀元前875年前の人で、イスラエル民族が偶像礼拝に陥り、まことの信仰者が最低の数になった時の預言者でした。列王記第一19章18節にこのように記されています。「しかし、わたしはイスラエルの中に七千人を残しておく。これらの者はみな、バアルにひざをかがめず、バアルに口づけしなかった者である。」ですからエリヤの使命は、モーセ五書に記されている真の信仰を、偶像礼拝の蔓延した時代に回復することでした。そういうわけで、モーセは律法の代表と言われ、エリヤは預言者の代表と言われています。

この旧約時代に働いた預言者たちの労に報いることと、その働きが無駄でなかったことを知らせるために、イエス様はこの旧約の代表者たち二人に、御自分がエルサレムで成し遂げようとされている最期のこと、すなわち、十字架に付けられ、葬られ、復活され、そして昇天されることを話したのです。モーセもエリヤもイエス様のお話を聞いて、これで多くの人々が救われるようになると慰められました。なぜなら、偶像礼拝は創世記3章に書かれているように、最初の人間アダムとその妻エバが、神様の命令に逆らったことによって、神様が人間に植え付けられた罪から生じて来るからです。この罪によって、神様御自身が人間をご自分から遠ざけようとしておられるからです。神様のなさることを、人間は変えることができません。ですから人間であるモーセとエリヤの働きには、おのずと限界がありました。それで真の神様であり、真の人間であるイエス様が、全ての人間の罪の身代わりとして十字架に掛かり、復活され、昇天されることにより、人々がイエス様を神様と信じることができるようにされたのです。このイエス様の働きにより、信じる人の罪は全て取り除かれることになりました。それではモーセとエリヤに代表される預言者たちの働きは無駄だったのかと言いますとそうではありません。モーセは律法を通して罪を示して人々を悔い改めに導き、エリヤは預言を通してモーセ五書に示された真の神様に立ち返るように人々を導き、これから来られる救い主を信じるようにと、イエス様が来られる道備えをしたのです。

モーセとエリヤの二人がイエス様と別れようとした時、ペテロがイエス様に言いました。「先生。ここにいることは、素晴らしいことです。」そのペテロの感じた素晴らしさが、半端でなかったことは、そこにイエス様とモーセとエリヤのために3つの幕屋を造って、3人を留（とど）めたいと提案したことからわかります。この何とかしてこの3人をこの場に留めたいというペテロの提案から、天国とは非常に素晴らしい所であることが分かります。天国とは罪赦された人たちが入る国ですから、必ずや素晴らしい所であることに間違いがありません。

この素晴らしい天国に確実に入ることのできる宗教が、キリスト教です。キリスト教以外には無いと言っても過言ではありません。現実にはどの宗教も天国を目指していますが、その天国に入る手段が確実に備わっているのかと言うと、疑わしいところが有るからです。イエス様はヨハネの福音書14章6節で言われました。「わたしが道であり、真理であり、いのちなのです。わたしを通してでなければ、だれひとり父のみもとに来ることはありません。」またヘブル人への手紙10章20節でこのように言われています。「イエスはご自分の肉体という垂れ幕を通して、私たちのためにこの新しい生ける道を設けてくださったのです。」キリストのみが天国に入る唯一の道なのです。他の道は獣道(けものみち)であって、天国には通じていません。これだけははっきりしています。

ペテロが天国の素晴らしさに酔っている内に、雲が沸き起こり、人々を包み始めました。この雲は白い雲で、父なる神様の臨在を表します。雲の中に父なる神様がおられるのです。ですからその雲に覆われるということは、父なる神様と一緒ということになり、罪ある生身の人間には耐えられない事です。

また、雲は全ての物を隠してしまいます。以前、真っ白い霧の立ち込める関越道を走ったことが有りますが、先が見えない恐ろしさにスピードが出せませんでした。雲の中も同じことです。目が見えず、手探りで進まなければならないことは恐怖です。盲目の方々の気持ちが分かるような気がします。

雲の中から声が有りました。「これは、わたしの愛する子、わたしの選んだ者である。彼の言うことを聞きなさい。」これは父なる神様の御声です。父なる神様が、御子イエス様を、「私の愛する子」と呼び、「私の選んだ者である。」と太鼓判を押されました。ですから「イエス様の言うことを聞きなさい。」と言われるのです。何のために父なる神様は、イエス様を選ばれたのでしょか。その選ばれた目的は、人間を罪の滅びから救うためでした。使徒パウロは、この父なる神様の御言葉を、ピリピ人への手紙2章6節から8節でこのように解説しています。「キリストは神の御姿である方なのに、神のあり方を捨てられないとは考えず、ご自分を無にして、仕える者の姿をとり、人間と同じようになられました。人としての性質をもって現れ、自分を卑しくし、死にまで従い、実に十字架の死にまでも従われました。」この父なる神様の意志に従われる、イエス様の従順さの故に、父なる神様はイエス様を愛されておられるのです。

こうして神様の側の救いのシステムは整いました。次に必要なのは、この救いのシステムに人間が素直に入ってくれることです。ですから人間に求められるのは、救い主イエス様の言う事を聞く事です。そのイエス様の言われることとは唯（ただ）一つです。それはマルコの福音書1章15節の御言葉です。「時は満ち、神の国は近くなった。悔い改めて福音を信じなさい。」エデンの園でアダムとエバが罪を犯した時、父なる神様はエバをだました蛇に言いました。創世記3章15節です。「わたしは、おまえと女との間に、また、おまえの子孫と女の子孫との間に、敵意を置く。彼は、おまえの頭を踏み砕き、おまえは、彼のかかとにかみつく。」アダムとエバの時代から4000年の時が満ち、この女の子孫としてイエス様が登場されました。ただ素直に自分の罪を悔い改めて、福音であるイエス・キリストを信じるならば、誰でも神の国に入れる、というのです。それ程簡単に神の国に入れるようになりました。即ち、神の国は私たちの近くに存在するようになったのです。

本日イエス様は、ペテロとヤコブとヨハネの3人の弟子たちを、高い山の上に連れて行き、御自分の天国における本当の姿を弟子たちに見せられました。すると父なる神様は雲の中から「彼の言うことを聞きなさい。」と言われ、悔い改めてイエス・キリストを信じるようにと人間に求められました。誰でも悔い改めてイエス・キリストを信じるならば、天国に入れるのです。その天国に入る道は、まず神様を求めることから始まります。まず神様を求めましょう。そうすれば神様はあなたを悔い改めに導き、イエス・キリストを信じさせ、天国に入れてくださいます。これこそが、この世に在って神様から祝福を受ける唯一の道です。

人の全ての考えに勝る神の平安が、あなた方の心と思いを、キリスト・イエスにあって守ってくださいますように。アーメン。