「『あなたの父と母を敬え。』これは約束を伴う第一の戒めです。」
エペソ人への手紙 6:2
芥川龍之介の書いた「杜子春」という短編小説があります。主人公の杜子春は仙人になるため弟子入りしました。師匠は「何があっても言葉を発するな」とだけ言い残し、去ってしまいます。やがて様々な悪鬼が現れ、幻をもって彼を痛めつけますが、彼は仙人になるために一言も漏らしません。すると悪鬼は最後の手段とばかりに、死んだはずの両親を連れてきて、目の前で暴行を加え始めました。その時、杜子春の母が言いました。「お前が幸せになれるなら構わないよ。」彼はこれを聞いて堪らなくなり、「お母さん!」と声を上げてしまいました。結局、杜子春は仙人になれませんでしたが、晴れ晴れとした顔つきで山を降りていきました。そして言いました。「仙人になれなかったことも、反って嬉しく思います。これからは正直な人間として生きていきます。」親を愛さない、悟りを開いて浮世離れした仙人であるよりも、親を愛する正直な人間でありたいと思ったのですね。
