～ 環境を超越した真の自由 ～

私たちの教会は交差点の角にあり、私たち夫婦はその２階の牧師館に住んでいます。教会の先の町には、牛や豚の大きな牧場があるようで、よくトラック一杯に積まれた牛や豚が運ばれていくのを見かけます。

　牛を積んだ車が通り過ぎても、気付かないことが多いのですが、豚の場合は例え見ていなくても、必ず気付きます。それは、彼らの糞尿の臭いがしばらくは家中に充満するからです。これだけの臭いを通過するすべての場所に残していく、その匂いのパワーに感嘆します。

　この臭いをかぐと、昔会社に勤めていた時のことを思い出します。それは車でよく地方を回っていたのですが、向こう岸に渡る時にはフェリーを利用していました。すると、フェリーに豚を積んだ車が同乗していたりします。すると、その辺り一帯に豚の糞尿の臭いが充満します。

　ある時、同僚と二人で出張中にフェリーに乗ると、運悪く豚の運搬車と私たちの車と隣同士になってしまいました。向こうに到着するまで約４０分の間、この匂いの中で過ごすのは耐えられないと、二人で車を降りて甲板の方に避難しました。

　しばらく経ってフェリーが向こう岸に接岸しようと、スピードを緩めたので私たちも車に戻ることにしました。そして、きつい臭いの充満する車に近づくと、そこで驚きの光景を目撃したのです。それは、豚を積んだトラックの運転席に乗っておられた二人の方が、そこで弁当を食べておられたからです。このような強烈な臭いの中で翻弄されることなく食事ができるなんて、環境を超越した真の自由を見たような気がしました。

　そこで、以前読んだ本の中に出ていた譬え話を思い出しました。（3～40年前なので正確さは不明）それは、小川を流れる笹舟が、流れているうちに大きな石にさえぎられて先に進めなくなるばかりか、流れによって何度もコツコツと石にぶつかります。そこで「この石を取り除いて下さい。」と神に祈ります。しかし、実は次のように祈るのが良い祈りだというのです。それは、「石を除けてではなく、小川の水かさを増して、この石を超えて行けるようにして下さい。」だそうです。

　これは、私たちが様々な問題に直面した時の解決の方法を教えているように思います。例えば直面する問題が取り除かれたら、それは喜ばしいことに違いありません。「神様、この問題を取り除いて下さい。」と祈り、解決を頂いたとします。しかしこれでは、同じような問題が起こったら、また悩み苦しまなければなりません。それだけではなく、そのような問題に直面することを恐れながら生きないといけないのです。

　しかし、もう一つの方法で、「この問題を乗り越えさせてください。」と祈り、問題から逃げずに、それを乗り越える体験をするならば、再び同じような問題に直面しても恐れることはありません。乗り越えられた体験があるからです。それだけではなく、同じような問題を抱えている人々を励まし、体験を通してアドバイスをすることもできます。

　すなわち、試練から逃げるのではなく、立ち向かって乗り越える体験をするときに、それらを超越した真の自由があるように思います。私自身、試練に果敢に挑戦し、すべての問題を超越した人生を送れたらと思います。

　そのとき、いちじくの木は花を咲かせず、ぶどうの木は実をみのらせず、オリーブの木も実りがなく、畑は食物を出さない。羊は囲いから絶え、牛は牛舎にいなくなる。しかし、私は【主】にあって喜び勇み、私の救いの神にあって喜ぼう。私の主、神は、私の力。私の足を雌鹿のようにし、私に高い所を歩ませる。ハバクク３：１７～１９