麗しい愛の関係
~「そんな弱い心じゃ駄目だよ」~
教会のすぐ近くにお住まいのH先生がNHK学園から先々月発行されたばかりの絵手紙第4集「道」というご本を下さいました。第4集ということは、先生が書きためられたものを時々このような本にして発行されているのだなと思って、読ませて戴きました。
素晴らしい内容に、知らなかったことを教えられ、ついつい見逃してきたことを再考させられ、「そうだ、そうだ」と共感させられたかと思うと、感動し心が震える思いにさせられるという、比較的薄い本なのに内容の詰まった良書だと思いました。
また、墨字で書かれた字の綺麗さやバランス良さ、絵の優しさ等を見ていると先生の温かいお人柄がにじみ出ているようで、感動いたしました。
絵手紙の内の一つに「弱い心」というものがありました。それは先生が学生時代(以後H少年)のあるテスト中の寒い朝の出来事を記したものでした。
H少年は当時、片道2時間もかけて通学されていて、そのため毎朝5時5分発の汽車に乗らなければならなかった。
当時は今みたいに炊飯器などという便利な物のない時代ですから、お母様が毎朝3時に起きて薪でご飯を炊いて朝食を準備して下さった。
H少年は多分夜遅くまでテスト勉強されて、その上お母さんが起きる時、自分も起こしてくれと頼んで休まれた。しかし、おかあさんはH少年の身体を気遣い、少しでも寝かしておこうと起こしてくださらなかった。
H少年は母親を責めて「今日のテストは0点だろう」と不満を言った。それに対して母親は何も言わずに、土間に下りてH少年の靴を磨き始めた。小さく丸まったお母様の後ろ姿を見た時、H少年は「私は何と傲慢な人間だろう」と、突然涙が溢れて来て、それが熱いご飯の上にぽたぽた落ちて食べることができなくなった。
それを見てお母さんが「どうした」と言い、「そんな弱い心じゃ駄目だよ」と言われた。それが、先生が忘れられない「母の一言」であった、とこのお話は結ばれていました。
この絵手紙には、この様な内容のことが読みやすく、簡潔に述べられていて、先生が少年時代に持って歩かれたであろう古い懐中電灯の絵が描かれていました。
これを読ませて戴いて、まずお母様とH少年との麗しい親子関係に感動しました。また、人間自分の傲慢さほど見えにくいものはないのに、H少年が自分を傲慢だと涙するのを見て、謙りと謙遜さを教えられました。さらに、お母様が口で教えるより何倍も力強い愛の力によって感化を与えて行く姿に、これこそ真の家庭教育の在り方だなと思わされました。
私たちはともすると、自分の立場だけに固執し、不平不満の中を生きて行きがちだと思います。たとえば、ここでH少年がぶつぶつ不平を言いながら家を飛び出して行ったり、お母様が、「誰の為にこんなに早く起きて食事を作ってるの?もう明日からは自分で起きて勝手に行って頂戴」などと不満をぶつけたら、収拾がつかなくなり、いつまでもこの争いは尾を引くことになるでしょう。
それが、お互いが相手に思いやりを持ち、愛を持って対応することで全く違う解決をもたらすことになるのだと教えられます。
聖書は私たちに謙って仕える者になりなさいと教えます。
何事でも自己中心や虚栄からすることなく、へりくだって、互いに人を自分よりもすぐれた者と思いなさい。自分のことだけではなく、他の人のことも顧みなさい。あなたがたの間では、そのような心構えでいなさい。それはキリスト・イエスのうちにも見られるものです。ピリピ2:3~5
No Response to “麗しい愛の関係”