神様 義母を有難うございましたⅢ
〜「あんたよう歌知っとるねぇ」〜
牧師夫人 佐多多視子
○母の歴史・略歴篇続き
先週までお話ししてきたように、母は認知症で、我が家に来た時は、自分の経歴も名前さえも分からない状態だったのですが、母の略歴を書き、それを何度も読んであげているうちに、少しずつ昔のことを思い出してきて、自分の旧姓が小田だったことや、自分の幼少期から女子高時代・働き始めてからのこと等断片的に思い出してきました。
母の記憶がよみがえってきた事は嬉しいことだったのですが、思い出してまずい事もありました。それは母が「私の家が薬師町にあるので、そこに連れて行ってくれ。」と言いだしたのです。薬師町は母が幼少期に過ごした所ですが、その家はもうとっくに他の人の物になっています。そのことを話してもききませんので、車で一緒に行くことにしました。
徐々にその家に近づいてくると「お母さん、よく見てくださいね、お母さんの思っている家と違うと思いますから、・・・。ここですね。横を流れてた川の水もないし、玄関の様子も違うでしょ。降りてみますか?降りてチャイムを押してみましょ。全然知らない人が出てきますよ。」と言っても降りませんでした。母は、自分の思っていた家と違うことが分かった様でした。
半年で略歴は全部思い出しました。このように、たとえ認知症で話が通じなくても、正気の部分が残っているし、元に戻る可能性があるのです。こんな人と付き合う時間はないとか、私は忙しいとか言わないで優しくしてあげて欲しいと思います。母は人恋しくて寂しくて誰かに側にいて欲しかったんだと思います。それは私ではなく頭がおかしくなるほど、愛して育てた子供たちだったのだと思います。主人は少しでも恩返しができて良かったです。
○母の大正琴篇
母が元気な時は大正琴を習っていて、私たち夫婦も何度か発表会に行きました。母が再び大正琴を弾けるようになると、施設の人も少しでもゆっくりできるのではと思い、略歴の勉強をする傍ら大正琴への挑戦も始めました。大正琴を実家から持ってきてもらいましたが、本が見つからないというので、3男の同級生のお母さんが大正琴を教えておられるのを思い出し、譲っていただく事にしました。しかし、プレゼントしますというので、有難くいただき、教会用品を御礼に差し上げました。
さて、はじめては見たものの私も弾いた事がないので、「お母さん、たぶん左手で本に書いてある番号と同じ数字を押さえて、右手で弦をはじくのだと思います。最初が3なので3ですね、次は5なので5・・・」1小節弾くのも随分時間がかかりましたが、毎日しているとだんだん早く弾けるようになってきました。
「この歌はこうです。」と歌って見せると「あんたよう歌知っとるねぇ」と嬉しそうにしていました。1曲弾けるたびにいっぱい拍手をして誉めました。私も讃美歌以外を歌うのは30年ぶりぐらいで、妙な気持ちでした。
その内普通に歌える速さで弾けるようになったので、デイサービスに琴と本とを毎回持って行くようになり、お誕生会では皆様の前で披露させて戴けるようになりました。
わが子よ。もしあなたが、私のことばを受け入れ、私の命令をあなたのうちにたくわえ、あなたの耳を知恵に傾け、あなたの心を英知に向けるなら、・・・そのとき、あなたは、主を恐れることを悟り、神の知識を見いだそう。主が知恵を与え、御口を通して知識と英知を与えられるからだ。箴言2:1~2、5~6
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