手振りの散髪屋さん

公開済み 12月 1, 2013 by 管理人 in アドナイ・エレ

とうとう月に1度の夢は実現できなかったけれど〜

クリスマスを前に谷山にある、行き付けの理髪店に行ってきました。私が行く、朝の9時過ぎにはいつもお客さんは誰も来ておらず、理髪店のご主人と奥さんがお客さん用の待合椅子に座って、新聞を読んだり、テレビを見たりしています。

大概は、私が入って来たことに気づかずに、そのまま座っておられます。それで、私が敢えて目の前に立つとびっくりして、立ち上がって「どうぞ、どうぞ」と鏡の前の散髪用の椅子に座るように手振りで勧めてくれます。

私が椅子に座るとご主人が私の首にペーパーを巻いてその上をタオルで覆い、さらに前掛けをかけて全身を覆ってくれます。その後ご主人が私の前に立って、「今回はどうしますか。」という顔で私を見ます。私が「普通に」というと、頷いて刈り始めます。

ここの理髪店には30年前、私がまだこの地で教会開拓を始めたころから通っていました。ご主人も奥様もろうあ者なので、お話ししながら意思疎通をすることができません。そこで手振りをしながらこちらの思いを伝えます。

開拓伝道の頃はお金がなかったので、3か月に1回程度散髪に行きました。行くたびに私が「短めに刈ってください」と言って、右手の親指と人差し指を狭めながら手振りをすると、ご主人もそれに答えて「短めですね」と手ぶりで確認してくれていました。

当時は行くたびに毎回「短くしてください。」と言って、3か月後ずいぶん伸びたころまた行って短くしていただくということを繰り返していました。

それでもいつか毎月散髪に行けるようになる日が来るのを夢みていました。それが今は月に1度は行けるようになったのですが、残念ながらもう昔の様には髪の毛が速く伸びてくれなくなったので、月に1度の夢はとうとう実現できないままになってしまいました。

今ではもう以前のように「短く」と手ぶりすることもなくなりました。しかし、理髪店のご主人は今でも、刈り始める前には以前と変わらずに、私の方を向いて「どうしますか」という風な目で見られるので、「普通に」と手振りを続けています。もうずっと「普通」でいいのですが、ご主人には昔の「短く、短く」が強く印象に残っているのだろうと思います。

ここの理髪店はご主人も奥さんも非常に優しくて丁寧なので今でも30分程度かけてここまで続けて来ています。奥様は顔中、眉毛の間まで髭を剃ってくれて、その後に鼻毛切りと耳掃除を丁寧に優しくしてくれます。

またご主人は綺麗に刈り終った後、首筋から肩、それから背中の肩甲骨あたりと最後は両手の指先までゆっくりマッサージをして下さいます。これがまた非常に気持ちいいので、いつまでも止めないでほしいと思ってしまうほどです。揉み終わった後、軽く首筋から肩へと両手で肩たたきしてくれて散髪を終わります。

髪を刈っていただき、体をマッサージしていただきながら、お二人が自由にお話しすることができないもどかしさとは如何なるものだろうかと考えさせられます。自分の喜びや悲しみを言葉で自由に表現できない苦しさ、伝えたいことを自由に伝えられないもどかしさは私たちでは到底はかり知ることができないものだろうと思います。

私だったら1日2日全く話すなと言われただけでどうかなりそうです。それなのに、いつもにこやかに対応してくれるご夫妻に感謝しつつ、私自身も不必要な言葉、人を傷つける言葉などを口に出さないで、人の徳を高める言葉を使うように気を付けたいと思わされています。

 

 あなたがたのことばが、いつも親切で、塩味のきいたものであるようにしなさい。そうすれば、ひとりひとりに対する答え方がわかります。コロサイ4:6

私たちはみな、多くの点で失敗をするものです。もし、ことばで失敗をしない人がいたら、その人は、からだ全体もりっぱに制御できる完全な人です。ヤコブ3:2

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