～何にも知らずに帰り着いてからびっくり～

このところ連日テレビや新聞で、３０年前鹿児島に大きな災害をもたらした８・６水害の特集をしています。鹿児島市の家々を飲み込み、甲突川に設置された２つの石橋を次々に壊して流し去り、さらに国道１０号線を走っていた車を次々に海に付き落とした、あの大水害の報道です。

鹿児島市では、市内中心部を流れる甲突川、新川、稲荷川が相次いで氾濫し、繁華街の天文館や西鹿児島駅（今の鹿児島中央駅）一帯が広範囲で浸水しました。被害にあわれた人々はあの災害を、昨日の様にはっきり覚えていて、今でもちょっと雨が激しく降っただけで、あの当時を思い出して恐ろしくなると話しています。

それは、１９９３年の8月６日のことでした。その日、私たちは大分の子供キャンプの講師としての奉仕を終えての帰りでした。大分から九州横断をして福岡の久留米に出て、高速道路を順調に南下していました。

外は強い日差しが照りつけ、まさしく夏本番という上天気でした。熊本を過ぎて普段は何も考えずに、高速で鹿児島に向かうのですが、その日はなぜか八代まで来ると、そのまま高速で鹿児島に入るか、高速を下りて３号線を下るか迷いました。国道3号線に入ると明らかに倍以上の時間がかかります。それでも、川内のＭ先生へのお土産があり、それは特に急いで渡す必要もなかった物でしたが、ちょっと寄って帰ろうかということになりました。

それで、高速を降りて３号線を走っていて阿久根ぐらいまで来ると、にわかにあたりが薄暗くなり、突然激しい雨が降り出しました。そして、１０分もしないうちに国道横の土手から水が勢い良くほとばしり出て来て、あっと言う間に道路には水が溢れ、道路が川のようになりました。

そして、川内の水引という所に来ると、ついに道は冠水していて消防の方が水に入って通行止めを告げていました。前にも後ろにも行けない状態で待っていると消防の方が、少し水が引きはじめたように感じたのか、試しに私たちの車1台だけ通してくれました。

それで何とかＭ先生のお宅に伺うことが出来、しばらく歓談していると、降り続く雨で周りの田んぼに水があふれ出し、ついには道路も冠水し始めました。このままでは帰れなくなると思い、急いでお暇して、鹿児島市に向かいました。

予定より時間がかなり遅くなっていたので、国道は通らず近道して山道の農面道路を走りました。激しい雨は相変わらず降り続いていて、農面道路も所々崖が崩れて、石や土の塊が道にせり出してきていました。それでも大雨の中、山越えで何とか家にたどり着けました。

すると、高校生だった長男は補習のために一人で留守番していたのですが、この豪雨の中どうしてここまで帰りついたのかと非常に驚いていました。

その時点では、私たちは鹿児島市中が集中豪雨で大変なことになっているとは全く知りませんでした。テレビの映像で国道３号線に水が溢れて、車が何台も浮かんで流れている様子を見て驚きました。そして、長男も腰まで浸かって学校から自転車を押して帰ってきたと話していました。

さらに驚いたのは、高速道路を通って帰っておられた人々は、途中から高速が通行止めになったので、国道１０号線に回り、海岸線を通って帰っていました。するとあちこちで土砂崩れが起きて、立ち往生を余儀なくされました。するとついに、竜ヶ水方面で山が４ｋｍにわたって崩れて大量の土砂が家や電車やバスや車、さらに逃げ惑う人々を飲み込んで海に投げ落とし、大惨事になっていました。道が塞がれ船で助けに向かっていましたが、沢山の方々が犠牲になられました。

もし、私たちが3号線に入らないで、いつものように高速道路を走り続けていたら、間違いなくあの大惨事に巻き込まれていました。あの小さな判断が家族の命を救いました。今でもあの判断の背後に神様のみ手があったものと確信しています。

災いは、あなたにふりかからず、えやみも、あなたの天幕に近づかない。まことに主は、あなたのために、御使いたちに命じて、すべての道で、あなたを守るようにされる。詩篇９１：１０～１１